「カオスな道路」と付き合うための一番大切なコツ

「ベトナムに来たけれど、バイクの波がすごすぎて道を渡ることもできない……」

「道路がカオスすぎて、いつ事故に巻き込まれるか毎日ビクビクしている」

初めてベトナムを訪れた方なら、目の前を埋め尽くすバイクの群れと、あちこちから聞こえてくるクラクションに圧倒されるのではないでしょうか。

日本とは交通事情が大きく異なり、信号や車線に対する感覚も違います。道路を渡るだけでも、「いったい、いつ渡ればいいんだ?」と足がすくんでしまうことがあります。

私自身、2000年からホーチミンに住み、25年以上にわたって日常的にバイクに乗ってきました。しかしその間、交通事故に遭ったことは一度もありません。

もちろん、「ベトナムの道路は安全だから大丈夫」という意味ではありません。むしろ逆です。

危険だからこそ、常に危険を予測している。

私が長年ベトナムの道路で実践してきたのは、これだけです。


ベトナムの交通で大切なのは「危険予測」

ベトナムの道路を安全に歩いたり、バイクを運転したりするうえで大切なのは、運転技術や度胸ではありません。

重要なのは、「次に何が起こるか」を常に予測すること。

日本では、「赤信号なら車は止まるだろう」「前の車は急に動かないだろう」と考えても、大きな問題になることは少ないでしょう。

しかし、ベトナムでは、そうした「~だろう」という前提を少し疑ってみる必要があります。

「赤信号でも、どこかからバイクが来るかもしれない」
「停車している車のドアが突然開くかもしれない」
「路地からバイクが飛び出してくるかもしれない」

こうした「~かもしれない」を常に頭の片隅に置いておくのです。
すると、実際に危険が起きてから慌てるのではなく、その一歩手前で対応できるようになります。

「危険を避ける」のではなく「危険を予測する」

ここで大切なのは、危険を見つけてから避けようとするのではなく、危険が起こる前に想像しておくことです。

例えば、道路脇に車が止まっていたとします。

「車が止まっている。だから、その横を通ろう」

だけではなく、

「この車のドアが突然開くかもしれない」

と考える。

路地からバイクが出てきそうなら、

「まだ見えていないけれど、向こうからバイクが来るかもしれない」

と考える。

つまり、目に見えているものだけではなく、「この次に何が起こる可能性があるか」を想像するわけです。

これを繰り返していると、次第に意識しなくても危険を予測するようになります。


ヒマラヤ登山で身についた「危険予測」の感覚

私がこうした危険予測を意識するようになった背景には、若い頃の登山経験もあります。

ヒマラヤの高所登山のような極限の環境では、ほんの小さな判断ミスが大きな事故につながる可能性があります。

そのため、登山中は自然と、

  • 「この斜面は崩れないだろうか」
  • 「この足場は大丈夫だろうか」
  • 「この先で状況が変わる可能性はないだろうか」

と、常に先の危険を考えるようになります。

実は、この感覚はベトナムの街中でもよく似ています。

もちろん、街中とヒマラヤでは危険の種類も深刻さもまったく違います。しかし、「今は大丈夫」ではなく、「次に何が起こるか」を考えるという点では共通しています。

私がベトナムの道路で心がけているのも、まさにこの感覚です。


「怖がらない」のではなく、「怖さを知っている」

長年ベトナムに住んでいると、よく「ベトナムの道路を怖いと思わなくなったでしょう」と言われます。

確かに、初めて来た頃に比べれば、道路を渡ることにもバイクに乗ることにも慣れました。しかし、私は「危険ではない」と思っているわけではありません。

むしろ、「危険だからこそ気をつける」という感覚は、今でも変わりません。

慣れというのは、油断することではありません。
「どこに危険が潜んでいるのかが分かるようになること」なのだと思います。

ベトナムの道路を歩くときに意識したい3つのこと

ベトナムに来たばかりの方は、まず次の3つを意識してみてください。

  1. 「~だろう」ではなく「~かもしれない」と考える
  2. 自分の進行方向だけでなく、左右や路地にも注意を向ける
  3. 危険が起きてからではなく、「起きるかもしれない」と思った時点で行動する

これだけでも、道路に対する見え方がかなり変わってくるはずです。


まとめ─ベトナムの「カオス」は、少しずつ見えてくる

初めて見るベトナムの道路は、確かにカオスに見えます。
バイクが次々とやって来る。クラクションが鳴る。車が横を通る。路地から突然バイクが出てくる。

最初は「こんなところ、どうやって渡ればいいんだ?」と思うでしょう。
でも、しばらくすると、そのカオスの中にも一定の流れが見えてきます。

大切なのは、度胸ではありません。

「次に何が起こるか」を想像すること。
「大丈夫だろう」ではなく、「何か起こるかもしれない」という意識を持つことです。

ベトナムの道路に慣れるということは、危険を怖がらなくなることではありません。
危険を予測できるようになること。

それが、私が25年以上ベトナムで暮らしてきて実感している、「カオスな道路」と付き合うための一番大切なコツです。

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