ベトナム現地に赴任することになった駐在員の皆さん、あるいは現地で日々奮闘している皆さん。
「ベトナム語って、一体どのくらい勉強すればいいんだろう?」と悩んだことはありませんか?
もちろん、現地語は話せるに越したことはありません。
しかし、私たちは語学留学に来ているわけではなく、本業のミッションを抱えています。
日々の業務に追われ、まとまった学習時間など到底取れないのが現実ですよね。
日常生活はカタコトの英語やスマートフォンの翻訳アプリでなんとかなりますし、社内には専属の通訳社員がいることも多いでしょう。
極論、「ベトナム語力ゼロ」であっても、日々の駐在生活やビジネス自体は一見、成り立ってしまうのです。
「通訳がいるから大丈夫」という罠
「仕事も生活も回っているし、わざわざ難しいベトナム語をイチから勉強しなくてもいいや」と思ってしまう気持ちは、非常によく分かります。
ベトナム語は発音(声調)が複雑で、日本人にとって極めてハードルが高い言語だからです 。
頼りになる通訳が横にいれば、自分が日本語で話した内容をすべて現地語に訳してくれます。
「言葉の壁はプロに任せて、自分は経営やマネジメントの本業に集中しよう」と考えるのは、一見すると合理的な判断に思えますよね。
しかし、ここにベトナムビジネスを揺るがしかねない大きな罠が潜んでいます。
流暢な会話力は不要、ただし「違和感を察知するリスニング力」は身につけるべき!
ベトナム駐在員が身につけるべき真の語学力、それは流暢にペラペラと話せるスキルではありません。
「通訳が、自分の意図と違うことを言っている(あるいはニュアンスを変えている)」と気づけるだけのリスニング力です。
この力を身につける最大のベネフィットは、「現場のブラックボックス化を防ぎ、不正や重大なトラブルを未然に回避できること」にあります。
流暢に話せなくても、「あ、今自分の指示とは違う単語を使っているな」「何か都合の悪いことを隠そうとしているな」と耳で察知できれば、それだけで現地社員に対する強い抑止力になります。
なぜ通訳100%依存は危険なのか?現場で起きる「3つのリスク」
なぜ話せなくても「聞き取る力」が必要なのか。その理由と、実際に現場で起きているリアルな具体例を見ていきましょう。
1. 指示が通訳の都合のいいように改変される
あなたが日本語で熱意を持って指示した内容や、厳しく注意した内容が、通訳のフィルターを通した瞬間に「通訳にとって都合のいいマイルドなニュアンス」に変えられてしまうことがあります。
ひどい場合は、通訳自身がサボりたいがために、指示のレベルを勝手に下げて現場に伝えているケースすらあります。
2. 日本人が気づかないのをいいことに「リベート交渉」が行われる
非常にシビアな問題ですが、日本人がベトナム語を一切理解できないのをいいことに、裏で勝手に業者とリベート(キックバック)交渉を進めてしまうケースは少なくありません 。
採用、仕入れ先の選定、オフィスや工場の工事業者選定など、あらゆる利権が絡む場面で、通訳や現地幹部が「自分の友達の会社だから」と紹介し、裏で数%から数十%のバックマージンを得ている構造は、現地ビジネスの現場でたびたび問題視されています 。
言葉が全く分からない駐在員は、要求されるがままにお金を払うしかなくなってしまうのです 。
3. 現場のトラブルや不満が「隠蔽」される
ベトナム人労働者(技能実習生や特定技能、現地ワーカーなど)が抱える不満や、現場での小さなミスが、通訳の段階で握りつぶされることもあります 。
例えば、現場でいじめや人間関係の確執が起きていても 、あるいは会社への給与・待遇不満が募っていても 、通訳が「みんな問題なく働いています」と嘘の報告をしていれば、駐在員は何も気づけません。
その結果、ある日突然「大量離職」や「失踪」という最悪の形で問題が表面化することになります 。
小さな違和感に気づく耳が、ビジネスを守る
ベトナムでのビジネスやマネジメントを成功させるために必要なのは、現地社員と「お友達」になることではなく、正しいガバナンス(統治)を利かせることです 。
外部監査を入れるなどの「仕組み」としての抑止策の他に、「個人」としての抑止力を持つことも大切です。
- ベトナム語ゼロでも生活はできるが、現場のブラックボックス化は避けられない
- 目指すべきは「流暢に話すこと」ではなく、「違和感を察知する耳(リスニング力)」
- 通訳の言葉に頼り切らず、現場の会話に耳を澄ませる姿勢が不正やトラブルを防ぐ
「このボスは、意外と言葉を理解しているかもしれない」と思わせることが大きな抑止力になり、サバイバルな海外環境で自社とビジネスを守る強力な盾になるのです 。
まずは現場で飛び交う「単語」を一つずつ聞き取ることから、始めてみませんか?