「おめでたい席だから少しだけなら……」
そんな甘い考えが通用しない時代が、ベトナムにも到来しています。
2026年の午年、旧正月(テト)の最初の3日間で、ホーチミン市交通警察は1,700件を超える飲酒運転を摘発しました。
これは前年比で約53%増という驚くべき数字です。
全国でも大規模な検問が実施され、多くのドライバーが足止めを食らう事態となりました。
「せっかくの休みなのに、なぜこんなに厳しいのか?」
「去年法律が変わって一度は落ち着いたはずなのに、なぜまた摘発が増えているのか?」
そう感じている方も多いはずです。
かつては「飲み屋にバイクで行くのが当たり前」だったベトナム。
今回の摘発急増の裏側にある法改正の影響と、ベトナム社会が直面している「意識の壁」について見てみましょう。
結論:ベトナムの飲酒運転取り締まりは「一過性のブーム」ではなく「日常」になった
ベトナムにおける飲酒運転の取り締まりは、以前のように「運が悪ければ捕まる」レベルではなく、「飲めばほぼ確実に捕まる」というフェーズに移行したと言えるでしょう。
1. 理由:2025年「改正道路交通秩序安全法」の本格運用
摘発件数が激増した最大の理由は、昨年(2025年)に施行された改正道路交通秩序安全法による法的根拠の強化と、警察へのノルマ・監視体制の徹底です。
これまでは現場の裁量に委ねられていた部分もありましたが、新法下ではアルコール濃度の基準が極めて厳格になり、警察の検問もデジタル化・組織化されています。
「テトだから見逃してくれる」という情緒的な期待は、現在の警察組織には通用しません。
2. 具体例:変わる風景と、変われない意識のギャップ
ベトナムの街並みには、いまだに矛盾した光景が溢れています。
- インフラの現状:居酒屋(Quán nhậu)には、当然のようにバイク駐輪場が併設されている。
- 生活習慣:テトの親戚回りや、つまみが足りなくなった際の「ちょっとそこまで」の買い出しにバイクを出す文化。
- 数字の証拠:今回の1,700件超え(前年比53%増)という数字は、警察が「本気で網を張っている」ことの証明であり、同時に「分かっていても乗ってしまう」層が依然として多いことを示しています。
街を観察してみても、一度は法改正で安定した交通事情が、時間が経つにつれて「喉元すぎれば熱さを忘れる」状態になり、カオスが戻りつつあるように感じました。
今回のテトでの集中取り締まりは、その緩んだ意識を強制的に引き締める「見せしめ」に近い効果を狙ったものと考えられます。
社会全体の意識は確実に変わりつつありますが、伝統的な生活習慣との乖離はまだ大きい。
ベトナムの交通安全意識が日本並みに向上するには、まだ時間がかかるかもしれません。