シャドーイングの落とし穴:音読ができなければ意味がない

「シャドーイング」は、外国語学習において非常に効果的なトレーニング方法として知られています。
もちろん、ベトナム語学習も例外ではありません。
ネイティブの発音を聞きながら、少し遅れて同じように発話することで、リスニング力と発音の両方を同時に鍛えられるという利点があります。

しかし、このシャドーイングの効果を最大限に引き出すためには、ある重要な前提条件があります。
それは、「音読が十分にできるスクリプトを使うこと」です。

音読とは、前の記事で紹介した通り、文章を声に出して読む練習のことです。
一見シンプルな作業に思えますが、実は語彙・文法の理解、発音、イントネーションなど、多くの能力が求められます。
つまり、あるスクリプトをスムーズに音読できるということは、そのスクリプトの内容をある程度理解しており、正しい発音とリズムで話す準備が整っている状態だと言えます。

ところが、意味が曖昧だったり、発音や語順が難しかったりして音読すらまともにできないスクリプトを、そのままシャドーイングしようとしても、表面的に「音をなぞるだけ」になってしまいます。
「何となく」真似はできるかもしれませんが、それは単なる「真似」でしかなく、得られるものはほぼありません。

「シャドーイングを続ければ上達する」と考える学習者は少なくありません。
しかし、それでは発音やリズムの誤りに気づかず、間違った癖がついてしまうリスクさえあります。
さらに、内容理解が伴っていないため、応用力や実践的な会話力にもつながりにくいのです。

したがって、シャドーイングに取り組む前には、まずスクリプトを精読し、語彙と文法を理解し、スムーズに音読できるようになるまで練習することが重要です。
音読で「正確に」「自然に」読めるようになって初めて、そのスクリプトを使ったシャドーイングが真の効果を発揮するのです。

結論として、音読が不十分な状態でシャドーイングをしても、その効果は非常に限定的です。
ベトナム語を効率よく習得するためにも、まずは「理解と音読」、その上で「シャドーイング」という順序を守ることを強くおすすめします。

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